季刊まちりょくvol.11
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15宮城県登米市生まれ。1991年、フリーアナウンサーとして独立し、ラジオパーソナリティー、ナレーター、司会として活躍。1998年から朗読家としての活動を開始。『源氏物語』などの古典から現代文学、オリジナル作品まで幅広いジャンルのレパートリーを持ち、音楽とコラボレーションした朗読公演も開催。また、朗読ワークショップやアナウンサー養成などの講師を務めるほか、全国各地で講演活動も行っている。せて「あーいーうーえーおー」って全部出せますよね。シャットアウトする音が何もない、心が解放されるような豊かな言語なんです。だからその特徴を活かすうえでも、深くゆったりとした息づかいを常に自分の中に持っていることが大事です。読み手が緊張して息が詰まっていたり力を入れすぎたりすると、聞き手が身構えてしまう。だから聞き手の静かな呼吸を引き出せるように、ゆったりとした呼吸での発声を意識しています。豊かな深い息にのせた日本語を美しく発音していくというのは、心にも良い影響を与えていくのではないかと思っています。◎耳を澄ます、心を澄ます今、映像文化が華やかで目からの刺激がすごく強い。それはそれで文明社会だと思いますが、映像にしても音にしても過多と感じるときがあります。私たちはかつて、ただ与えられるだけではなく、耳を澄ましたり、自分から心をそこに持っていって見たり聞いたりしていたのではないでしょうか。朗読の公演は、そんな感覚を取り戻してもらえる時間なのではないかと思うんですね。耳を澄ます、心を澄ますことで、自分の中の感じる力や想像力が引き出される。だから私は朗読会ではあえて自分の表現を自分の中では完結させず、お客様の想像力にゆだねます。作者や作品とお客様をつなぎ、みんなでひとつの世界をつくりあげるようなものにしたいと思っています。『源氏物語』を朗読する渡辺さん渡辺 祥子さん

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