季刊まちりょくvol.11
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14◎ラジオから朗読の世界へもともと私はラジオのパーソナリティからスタートしました。ラジオはリスナーの顔が見えない状況で声だけで情報を伝えていきますが、こちらの表情や態度が見えないからといってそれらを意識しないで話すと、“表情のない言葉”になってしまうんです。そのような中で声や言葉を深く考えるようになりました。あるとき旅先で偶然もらった手作り冊子の童話にものすごく感動して、「この物語を多くの人に伝えたい。でも、本屋で売っていないし、ラジオで朗読するには時間がかかりすぎる。じゃあ、自分で場所を設ければいいんだ!」と考え、そこから、声や言葉を直接届ける、朗読の舞台公演や講演活動が始まりました。それまではラジオで“情報を伝える”というイメージで仕事をしていたので、朗読の世界に入ったとき、物語世界をリアルに語ることにギャップを感じて戸惑いました。でも15年経った今、ラジオのパーソナリティであっても司会者でもナレーターでも朗読家でも、相手に語りかけるということは同じで、あとはそれぞれのシチュエーションに応じて声のトーンやテンション、息づかいの強弱など、アプローチのしかたを変えていくということなんだなと思うようになりました。◎日本語は豊かな言語 朗読の場合、私たち読み手は動いたり目線で表現したりしません。ただ声だけ。その声や間合いの表現だけで、振り向かずして振り向いた状況をお客様の心の中にどうイメージさせるかなど、夢中で追求してきましたね。また、日本語は高い低いのアクセントで意味の違いを表現しますから、それをうまく使って、日本語独特の音楽のような音の流れをつくることもできるなど、日本語の魅力を再認識するようにもなりました。例えば、日本語は母音が中心になっている言語だと言われます。姿勢を正して「ふーっ」と腹式呼吸をしたときに、深い息に乗渡辺 祥子さん(朗読家・フリーアナウンサー)に聞く「朗読」の声

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