季刊まちりょくvol.11
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10⇒P.8から続く◎持って生まれた繊細な楽器人の声は、声帯の太さ・長さなどの違い、それに頭がい骨や身体の大きさなど共鳴するところの形によって決められます。声帯は「持って生まれた楽器」。僕は小さいときにボーイソプラノで、きれいな声だねって言われましたが、それは自分が努力をしてできたものではなくて、親からもらったもの。その素材が僕の場合は恵まれていた。でもその恵まれた声を持っている人たちが歌の世界でやっていけるかどうかは、また別の問題です。声帯は本当に繊細です。伸ばしたり縮めたりして音(声)を出す。無理して歌い続けて一度声帯を壊すと、買い換えが利きません。元通りの声に戻る方もいれば、戻らない方もいる。僕も3年前に声が出なくなって、戻るのに1年半以上かかりました。昔は声はいくらでも湧いてくると思っていましたが、今は、プールされているものをいかに使うかというような感覚を持つようになりました。◎声の「質」 オペラの場合、ソプラノでもテノールでも声の質によって「コルラトゥラ」「リリコ」「ドラマティコ」(※1)などと分けられていて、その人の声によって合う曲とそうでない曲が出てきます。ワーグナーなどのオペラはオーケストレーションが大きいので、その中で対等に歌うためには、それなりの身体と強靭な声帯が要求されます。欧米では野外劇場の向正面まで声が聞こえるという歌手がいますが、僕のような声だと線が細くてオーケストラの音に吸収されてしまう。それで、僕はオペラは好きだけれど自分に合った宗教音楽を中心に勉強してきました。以前、仙台オペラ協会でヴェルディの『イル・トロヴァトーレ』を上演したとき、東京からテノール歌手の方に来ていただいて僕とダブルで演じたのですが、その方は高い音なんかカーッと出る。僕は身体を一生懸佐藤 淳一さん(テノール歌手)に聞く「歌」の声第2部 インタビュー声の表現者たち、声について語る仙台を拠点に活躍する、3人の「声」の表現者にお話をうかがいました。

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