季刊まちりょくvol.10
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20art reviewやんや ヘンデルの作曲したオラトリオ「メサイア」は彼の代表作であり、全53曲、演奏に2時間半ほどを要する大作である。第44曲は「ハレルヤ」で、誰もが知っている名曲。 オラトリオとは、声楽(独唱、重唱、合唱など)とオーケストラで演奏されるキリスト教的な題材を持つものを指す。「メサイア」は概ねイエス・キリストの生涯を生き生きと音で描いた歴史的傑作である。 この作品は私も何度か指揮をしたことがあるが、一番大変なことは精神的な緊張感を長時間保つことだ。曲は全部で3つの部分に分かれるが、たとえば第3部には多少緩慢な楽曲も散見される(もっとも、第1部や第2部前半の文句のつけようが無い充実感に比べると……という高度なレベルでの話だが)。そこををどう処理するかという問題は指揮者を悩ませる。今回、指揮の工藤欣三郎は全体に速めのテンポ設定をすることによってその解決を見た。それは正解だったのだろう。締まった演奏で曲は進む。あまりだれること無く終曲まで達したのは見事だった。ただ、私が感じたのは、同じ解釈で合唱人数がせめて50人以下、できれば40人程度ならもっと良い結果になっただろうということだ(当日は100人を超える人数)。つまり、人数が多いことによってメリスマ(母音で細かい装飾的なパッセージを速く演奏する部分)が揃わない、軽やかな部分が重くなる、オーケストラの人数が10数名と極端に少なくほとんど聞こえないなどの問題がおきている。 もちろん、毎回一般公募を実施しているので合唱が大人数になること、時期的(年末は演奏会が重なる)・予算的にオーケストラの人数を絞らなければならないこと等、運営上の悩みは了解済みであえて真しんし摯なひたむきさが伝わってくる演奏第30回「メサイアコンサート」(全曲演奏)石川 浩(作曲家・指揮者)仙台・宮城で開催された文化事業をレビュー(批評)としてご紹介します

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