季刊まちりょくvol.7
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3を壊してしまって教授に怒られたこと。学生課からの斡旋で、作並温泉で泊まり込みのアルバイトをしたこと……。キャンパスを歩きながら当時のエピソードがつぎつぎに繰り出される。 小池さんが短歌に出会ったのも、この片平で過ごした学生時代だ。当時は周りにそんな趣向の人間は皆無だったし、短歌を作っているなどと言おうものなら「古臭い」と馬鹿にされるような風潮だった。だから、「だれにも言わなかっ片平キャンパスの正門を入ってすぐ左手にある建物が、小池さんが学生生活を送った元・理学部棟(現・多元研科学計測研究棟)。この1階の角の部屋で、夜中まで実験を行っていた。学生たちがいつも集会をしていた構内の広場。石のベンチも健在。当時の喧騒はもうないが、キャンパスの開放的な雰囲気は変わらない。た。ひそやかな行いだったね」。ひそやかに作りはじめた短歌が、そのうちに実験や研究よりもおもしろくなっていったのだという。小池さんは大学院を終えたのち埼玉県内で教職に就く。31年にわたって高校で物理を教えながら歌人として第一線で活躍し、数々の賞を受けてきた。2007年からは高校の先輩でもある作家、故・井上ひさし氏の後を継ぎ、仙台文学館の館長を務めている。その文学館で開講している短歌講座は通算40回を超えた。

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