季刊まちりょくvol.7
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11地下展示室は一年を通して室温20℃前後、湿度70〜80%前後に保たれている。そのため館内各所に結露が生じ、エレベーター内にも除湿器が。地下展示室にできるだけ外気が入らないように2つの扉が設置されている(左)。また、入館者が展示室に足を踏み入れる前に靴底のごみを取り、外界の物質ができるだけ持ち込まれないようにする工夫も(右)。地底の森ミュージアム(仙台市富沢遺跡保存館)〒982-0012仙台市太白区長町南4-3-1 TEL022-246-9153 FAX022-246-9158〈アクセス〉地下鉄長町南駅(西2番出口)から西へ徒歩5分※富沢遺跡発掘30年を記念した展示を開催します!ぜひご覧ください。特別企画展「発掘 富沢!!―30年のあゆみ―」7月13日(金)~9月17日(月・祝)かつ水分を抑える働きをもつケイ素化合物(ポリシロキサン)による新しい方法が開発され、実行に移されました。保存処理が完了したのは開館の3か月前でした。 しかし開館後、時間の経過とともに遺跡面に白い結晶(硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム)が発生したり、亀裂が入るなどの新たな課題も出てきています。保存だけが目的の密閉された施設ではないため、外部から入りこむ物質の影響もあり、どうすれば遺跡を良好に保つことができるか、館のスタッフや関係者はつねに知恵をしぼっています。 ●世界のモデルとなる このように遺跡を現地で保存しつつ公開する使命を果たすためには、試行錯誤を重ねなければなりません。しかしそれでも、現地保存・公開にこだわる意味とは? 「遺跡の保存が決まったとき、発見時のままの状態で現地で見てもらうという方法をとることは、この遺跡に関わる誰しもが思ったことです。私たちが味わった感動を市民の方々にも味わってほしい、という強い思いがありました。発掘されたそのままの状態は、作りものではない“本物”です。それが臨場感や感動を呼び起こすのです」と太田さんは語ります。 また、「地底の森ミュージアムは世界初の試みをした施設なので、保存公開していくうえで予想だにしなかった課題が出てきたときに、答えになるような前例がないのです。そのたびに自分たちで解決していかざるを得ません。でもその経験は、今後世界で同じような遺跡保存のケースが現れたときに生かすことができるのではないでしょうか」とも。 人間がたどってきた歴史は今を生きる人間のよりどころでもある、と太田さん。2万年前の遺跡が、現代人に語りかけ、教えてくれることはたくさんあります。そのために遺跡を未来へ残していくことは私たちの役目でもあります。

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