季刊まちりょくvol.6
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26文化団体紹介◎3人の専門分野を活かす 「20世紀アーカイブ仙台」の設立は2009年6月。そのきっかけは、映像の仕事に携わる坂本英紀さんが、家庭に眠る8ミリフィルムの変換作業を行ううち、「こんなのも出てきたんだけど」と懐かしい映像や音源などが持ちこまれるケースがあったことでした。どれも貴重な資料だと思った坂本さんは、それらをひとつの場所に集積しようと、仙台の古写真を収集している編集業・佐藤正実さん、BGM音源を扱う伊藤豊生さんとともに、3人の専門分野を活かしたNPO法人(特定非営利活動法人)として、地域の記録資料の収集を始めました。収集資料が増えていくうちに、映像・写真・音声それぞれの特性と、それに人々の思い出が組み合わさることによって、さまざまな活用方法があることがわかってきました。◎枠を超えて受け入れられる活動 活動のひとつは、収集した写真の展示会や8ミリ映像の上映会です。昭和の仙台の風景が写った写真や映像は年配の方にとっては懐かしく、若者や子どもの目には新鮮に映り、世代を超えたコミュニケーションのための重要な素材となりました。また、高齢者が懐かしい映像を見ながら思い出を語り合ったり、昔の歌を歌ったりして脳の活性化を図る「回想法レクリエーション」も実施。「回想法」は医療・福祉の分野で注目を集め全国的に行われていますが、実写の映像を使う例は珍しく、“仙台方式”と呼ばれているそうです。 そのような蓄積は、はからずも東日本大震災後にも活かされることになりました。たとえば「仮設住宅で昔の映像を上映すると、お互いをよく知らない住人同士でも、思い出話で盛り上がり、笑い合ったりできるんです」とのこと。そのほか、「シネマエール東北」(被災地に映画を届けるプロジェクト)との共催で、県内各地の仮設住宅や公民館を会場に、一般の映画やアニメの上映会を開催するなどの活動も行っています。◎震災を経て 「20世紀アーカイブ仙台」では、震災後間もなくインターネット上で市民が撮影した震災記録写真の提供を呼びかけ、寄最近よく耳にする「アーカイブ」という言葉。日本語では「書庫」とも訳されますが、文書・画像・映像などを保存し、後世に引きつぐ役割を担う機関のことを指します。今回は、そのアーカイブの活動を行う「NPO法人20世紀アーカイブ仙台」の皆さんにお話をうかがいました。NPO法人20世紀アーカイブ仙台地域の記録と記憶を、未来へ引きつぐ

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