季刊まちりょくvol.6
24/108

22 震災後、予定していた公演の中止をよぎなくされ、前に進むこともままならず無為に日々を送る中、「ココロノキンセンアワー」という塩竈での舞台への取りくみを新聞で知った。こんな状況の中、動き出している人たちがいる――。それは驚きだった。復興を祈念して、5月からボランティア企画として行われたというその催しがどの様なものであったのか、私は知らない。しかし今回、「ココロノキンセンアワー演劇部第2回公演」と銘打ち仙台になだれ込んできた人々を目の当たりにし、塩竈でのボランティア活動が確かな一歩となってこの公演に結びついたのだと分かった。 目指すものも劇団も違うそれぞれが、ひとつの目的に向かって心を合わせている。「わたしたちは演劇がしたいのだ!」という切なる思いが、公演全体から伝わってきた。まさに「演劇部」の名にふさわしい活気とエネルギーに満ちた公演だった。 取り上げたのは、如月小春の「ロミオとフリージアのある食卓」。1979年に書き下ろされたという、小劇場演劇ブーム真っ盛りの作品。この“おいしい作品”を彼らは食べつくした。ミステリアスでスリリングな冒頭、機関銃のように発せられるセリフ、意表をつく展開。気がつくと、作者の仕掛けに絡め取られ振り回されている。まるでジェットコースターのような芝居だ。この才気あふれる作品を、とにもかくにも力づくで形にしてみせた。 それにしても、如月小春のイキのいいこと。若くしてこの世を去った劇作家だが、そんなことすら忘れさせた。作品の生命力は健在である。久々に「演劇」を観た、楽しんだという気がした。 いま、東北のこの状況下で、表現者たちそれいけ「演劇部」art reviewやんやココロノキンセンアワー演劇部第2回公演「ロミオとフリージアのある食卓」金野 むつ江(六面座座長)仙台・宮城で開催された文化事業をレビュー(批評)としてご紹介します

元のページ  ../index.html#24

このブックを見る