季刊まちりょくvol.5
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78月のセレモニーを経て、10月15日には能-BOX開館記念公演が行われました。題して「石しゃっきょう橋+Shakkyou―津村禮次郎×森山開次」。この能舞台ゆかりの津村さんによる古典作品「石橋」と、コンテンポラリーダンスの鬼才・森山開次さんが古典の「石橋」からインスピレーションを得て創作したというダンスのコラボレーションです。能「石橋」 シテ:津村禮次郎能「石橋」は、能の分類において「五番目物」と呼ばれる、鬼や獣の霊など人間ではない異類が登場する能の代表的な演目です。舞台は中国の聖地・清しょうりょうぜん涼山。仏跡を巡る旅の法師・寂昭が山の石橋にたどり着くと、樵きこりの少年(老人の場合もある)が現れ、橋の向こう側は文殊菩薩の浄土であり、この下は深い谷であるので容易に渡ることはできないと語り、姿を消します。その後、文殊菩薩の使いである霊獣・獅子が現れ、紅白の牡丹が咲き誇る石橋の前で豪壮な舞を舞った後、文殊菩薩のもとへ帰っていきます。獅子舞が演じられる後半部分のみを上演する「半能」形式で演じられることも多く、演出によって獅子が2頭や4頭になる場合もあるなど、壮麗でダイナミックな舞が魅力の作品です。歌舞伎舞踊の「連獅子」はこの「石橋」を基にして創られました。初心者でも能の醍醐味を味わうことができる演目ですが、演じ手(シテ)にとっては表現力や体力を要求される重い作品です。「仏の力を称たたえ烈しい獅子の舞。跳躍と頭かしらという赤い頭髪を烈しく振りつづける所作が見ものだが、実際に演じると吐き気を催すほどだ。こんな舞はこの『石橋』のほかにない」(津村禮次郎著『能がわかる100のキーワード』(小学館)より)

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