季刊まちりょくvol.5
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3を聞いていると、テントという劇場には不思議な力があるような気がしてくる。 『窓ぎわのセロ弾きのゴーシュ』の作者で、劇団創設以来の仲間だった山やまもときよかず元清多さんが2010年秋に闘病の末亡くなり、準備中には東日本大震災が発生……と、今回の旅公演は斎藤さんと黒テントにとってさまざまな思いを背負ったものになった。「被災地では『がんばろう』なんておこがましくて言えない。できることをしている今の自分を見てもらうことしかできない」と舞台に立つ。「テントやってて何が一番良かったかというと、昔お世話になった人が今でも公演に来てくれること。そういう人たちとともに年をとって、今じゃ旅公演は芝居やるのが目的なのか、その人たちに会いにいくのが目的なのかわからなくなっちゃうときがある(笑)」テントでは自炊が基本。トイレの水道の蛇口にホースをつないで水を引き、劇団の「炊事班」がひたすら料理を作っていた。「テントを張る場所は、その年によってこけし塔と図書館(公園内にあった旧・市民図書館)の間を行ったり来たり。植木市と重なったりしたこともあったなあ」

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