季刊まちりょくvol.5
16/60

14ーー能-BOXは当初2011年7月に開館する予定で、開館記念のステージは古典と創作の組み合わせというオーダーのもと、津村さんは能の「羽衣」、森山さんは「高砂」というお祝いの舞を準備されていたとうかがいました。そのタイミングで……。森山 震災があり、津村先生が「石しゃっきょう橋」のほうが復興に向けた演目として合っているのではないか、と変更されるということで、じゃあ僕も「石橋」をぶつけるといいますか、掛け合わさせていただく形にしました。能の「石橋」は、文殊菩薩を出すことなく獅子の舞によって文殊菩薩の浄土を表現しているんですよね。僕は今年、曼まんだら荼羅の特集番組のナビゲーターをさせていただいて、仏教とダンスの共通点を感じていたところに今回の震災が起こり、人間の体で仏の世界を描きたいという思いで、能の「石橋」とは違う角度で観ていただけるような作品を創りました。津村 芸能や芸術というのは個人の内面から出てくるものですけれども、(今回の震災のように)社会の大きな出来事から影響を受けて、それをがらっと変えたくなるということもあるんですね。今年8月に佐渡で「Shakkyou」を上演したときは躍動感や野獣性を感じさせる和太鼓と笛を使いましたが、仙台での公演ということで音楽を違うものにしたり、だんだんと透明感のあるものに変わっていきました。ーー森山さんはコンテンポラリーダンス、一方、津村さんは伝統芸能である能と、異色のコ津村 禮次郎 つむら れいじろう能楽師・重要無形文化財総合指定保持者。1942年福岡県生まれ。一橋大学在学中より津村紀三子に師事、その後先代観世喜之に師事。主宰する緑泉会の定例公演のほか、小金井薪能を企画開催。古典能だけでなく創作能、ダンス、和太鼓など他ジャンルのアーティストとのコラボレーション作品も多数。津村禮次郎 × 森山開次 (能楽師) (ダンサー・振付家) インタビュー

元のページ  ../index.html#16

このブックを見る