季刊まちりょくvol.4
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28月1日の夜、青年文化センターでは震災の影響で延期になっていた小山実稚恵さんのピアノリサイタルが開かれた。コンサートを待ちかねていたファンの万雷の拍手に包まれ、ステージと客席が一体となったような感動的な演奏会から一夜明け、七夕まつりの開催も近い仙台の街に、小山さんとともに出かけた。小山さんは日本専売公社(現・日本たばこ産業)に勤務していた父親の転勤に伴い、生まれてから3歳まで仙台で暮らしている。その後盛岡で中学2年の終わりまでを過ごし、東京に転居した。 「仙台には3歳までしかいなかったので、記憶は断片的なんです」と小山さんは言うが、ふるさとは仙台だという思いはとても強い。今年5月から6月にかけて、東日本大震災で大きな被害を受けた岩手・宮城両県の小学校や病院で演奏会を自ら開いたのも、生まれ育った東北の地への深い愛着によるところが大きい。小山さんが幼少期を過ごした仙台の家は、木町通にあったという。おぼろげな記憶を頼りに住んでいた場所を探し歩いてみたが、見つけられなかったそうだ。 「坂道があって、その坂道の途中のお菓子屋さんでキャンディを買ったとか、近くの神社によく遊びに行っていたような記憶があります」と小山さんは幼い頃の思い出を語る。青葉神社にて。深い緑に包まれた境内は森閑とした雰囲気。石段を降りて道路に出ると、「空気がさっきより温ぬるい感じがしますね」

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