季刊まちりょくvol.4
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22 合唱団にとって最も大切なものは、コンサートでもコンクールでもない。「練習」である。それを思い知らされたのが今回の震災であった。5月、グリーン・ウッド・ハーモニー(以下GWH)常任指揮者の今井邦男氏は「通常の半数しか練習に人が集まらない」と嘆いていた。震災後の多忙が大きな理由だという。あれから2か月、第59回定期演奏会を開催するにあたって、どれほど大変だったことか。いや、その過程は合唱できる喜びに満ちていたに違いない。 「壁きえた」(「白いうた 青いうた」)の“生きて会えた”、ミサ曲の“miserere nobis(我等を憐れみ給え)”“dona nobis pacem(我らに平安を与え給え)”のくだりは、合唱団は高揚し、私の魂はふるえた。ウェーベルンとシェーンベルクは、ややピアノが平板であったが、11月の全国大会での名演が予感させられた。メンデルスゾーンは、瑞々しい清水明子氏の歌声とともに、品格ある名演となった。榊原光裕氏率いるジャズユニット「Happy Toco」との共演は、GWHの新境地を感じさせられた。チルコットの「リトルジャズミサ」は、原曲の児童合唱と同じ調であるため、音域が通常のソプラノより低目で、なかなかコーラスが鳴らず、ジャズのシャープなビートや「Toco」とのアンサンブルの妙を表現するには至っていなかった。しかし、ストレートな児童合唱では表現し得ないふくよかさや揺らめきは流さすが石。最終ステージの「ジャズフォークソング」は、GWHの魅力が十二分に発揮されたステージとなった。客席もGWHらし学都が生んだ日本の至宝~グリーン・ウッド・ハーモニー第59回定期演奏会を聴いて~art reviewやんやグリーン・ウッド・ハーモニー第59回定期演奏会千葉 敏行(合唱指揮)仙台・宮城で開催された文化事業をレビュー(批評)としてご紹介します

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