季刊まちりょくvol.4
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15神谷 未穂 (かみや みほ)札幌市生まれ、鎌倉市育ち。6歳でヴァイオリンを始め、桐朋学園大学、ハノーファー国立音楽大学、パリ国立高等音楽院で学ぶ。パリを拠点に幅広い演奏活動を行い、2010年9月、仙台フィルハーモニー管弦楽団のコンサートマスターに就任した。東日本大震災後、仙台フィルの復興コンサート、訪問コンサート等で活動。和合 亮一さん詩人 出口の見えない福島に暮らして半年が経った。ありのままを伝えていくにはどうすれば良いのか。放射線と睨にらみ合う私たちの生活そのものが、恐らくは長い時間をかけてこのまま蓋をされていってしまうのかもしれない……、そんな危惧を抱きながら、静かな難しさと狂おしさと、悲しみと対峙している毎日である。 「福島を語ろう」という会を開いた。初めて会った方々数人でここまでの想いをそれぞれに話す場を、各テーブルのファシリテーターの進行のもとに設けた。参加者は時には泣き出しながらここまでを話し、今を確かめ合った。空っぽになるまでしゃべり、涙を流すことが、次の一歩を踏み出すきっかけとなると私はこの現場で確信した。当たり前の日々を取り戻したい……、ただそれだけを呆気なく奪われてしまった福島の現実。〈ありのまま〉を伝えていくことほど、難しいものはない。発信の本質を見つめる鍵としたい。和合 亮一 (わごう りょういち) 福島市生まれ。詩作のほか朗読やワークショップなどの活動も精力的に行っている。詩集に『AFTER』『地球頭脳詩篇』など。「晩翠わかば賞・晩翠あおば賞」の選考委員を務め、仙台とのゆかりも深い。東日本大震災の直後からTwitter上で詩を発信し注目を集めている。鈴木 拓さんARC>T(あるくと)事務局長4月4日、舞台表現者たちを中心とした「ネットワーク体」として、Art Revival Connection 東北(略称:ARC>T、通称:あるくと)が発足しました。震災直後は、文化的支援の必要性を感じることは難しく、僕たち演劇人も例外なく、悩み彷さまよ徨っていたと思います。時間がたつにつれ、少しずつ見えてきたニーズに応えるべく、子供向けイベントへの協力や、老人福祉施設、障碍者施設で身体のアクティビティを提供してきました。そこで感じたのは、震災以来、精神的に集中することが困難な中、人には日常を忘れて夢中になる時間が必要だということ。目に見える復興はとても速いです。それが故に、「自分はもう大丈夫だ」と言い聞かせることがあります。が、心の復興はそれに追いついていない気がします。街の機能と、人の心。そのスピードにギャップがあるのであれば、芸術文化がそれを埋めてくれるかもしれない。そんなことを考えながら、僕はこれからも此処で表現を続けていくのだと思います。ARC>T(あるくと) 東日本大震災を機に失われた文化・芸術に関するひと・まち・場の再生と東北復興に向けた諸活動にアートを通じて寄与するため、演劇・舞台関係者を中心に発足。各地で調査や出前活動などを行っている。鈴木 拓 (すずき たく) 仙台市生まれ。仙台での演劇活動(「きらく企画」代表)などを経て、現在、ARC>T事務局長を務める。「杜の都の演劇祭」のプロデューサーとしても企画製作を担当。

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