季刊まちりょくvol.3
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16 この日は、長かった夏の猛暑を忘れてしまうかのような、この年の最も寒い秋の夜を迎えていた。 しかし、コンサートへ向かう人々の足取りは軽く、会場に着いてからの聴衆の表情は、演奏への期待と想いを胸に、心なしか紅潮していた。 仙台フィルのコントラバス奏者・村上満志氏の企画で実現したこのコンサートは、その聴衆の期待に違たがわず、完成度の高い、緊張感に満ちた演奏会となった。 プログラム前半のベルリンフィルメンバーによる演奏はすばらしく、中でもジャルディーニ作曲「弦楽三重奏曲第6番イ長調」は白はくび眉で、弦の端正な美しい響きとアイコンタクトによる息のあった演奏は見事。近代のファゴット奏者・ウォーターソンが作曲した「ファゴットと弦楽の為の『ドニゼッティの思い出』」と共に、磨かれた技と、伝統を感じさせる調和のとれた演奏に引き込まれた。 このようなめずらしい作品を名演奏によって聴くことは、楽しいことであり、また大変有意義なことである。 さて後半は仙台フィルの有志も参加してのモーツァルトの作品が3曲。「オーボエ協奏曲ハ長調」、「交響曲第40番ト短調」、そしてアンコールの「アイネクライネナハトムジーク」である。 どれもよく知られた名曲だが、聴き手はかなりの緊張を強いられたのではないか。テンポが全体に速くその分表現の繊細さに欠け、落ち着いて音楽を堪能するまでに至らなかったのは残念。指揮なしだったことや、村上氏が演奏の合間に話されたように、充分な練習時間を取れなかったことも影響したのだろうか。 しかし国際色豊かなベルリンフィルのメンバーに、仙台フィルのメンバーが加わっての演奏は、互いに共有した意志による力強い演奏で聴力強い演奏で聴衆を圧倒art reviewやんやアンサンブル・ベルリンwithアンサンブル仙台 ジョイントコンサート八島 秀(作曲家)仙台・宮城で開催された文化事業をレビュー(批評)としてご紹介します

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