季刊まちりょくvol.3
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12なかったですが、こちらが作ったリストをもとに作品選定をするということで、緊張感はありましたね。編集部 2年目を組み立てる前提に井上ひさしというテーマがあったわけですが、鈴木さんはこの点に関してはどうでしたか。鈴木 僕は演劇祭にはテーマがあったほうがいいと思っていて、しかも「愛」とか「家族」とかぼやっとしたものじゃなくて(笑)、誰かが責任をとらなくちゃいけないぐらい尖っていたほうがいいと思っているんです。だから誰かのセレクションというのはすごくいいと思っていて。井上ひさしというテーマがあって、逆に自由にやることができました。編集部 佐々木さんは2年目にこだわったところはありますか?佐々木 2年目から、観劇ごとにスタンプを集めると特典が受けられるというスタンプカードを作ったんです。お得感というか、何かを集めようっていう気持ちがあると杜劇祭の活性化につながるのではないかと思って。2年目はちょうどプロデュース公演(※2)「はだか道」の上演があったので、街なかのカフェから劇場へどうぞ、という感じで、杜劇祭のスタンプがたまった方にはプロデュース公演の招待券をプレゼントしたりしました。編集部 お店はなるべく新しいところを開拓しようと? 鈴木 もう一度やってほしいというお店もけっこうあったのですが、2年目ともなると知らない作品であろうと知らない役者が出ていようと「杜劇祭のプログラムだから観に行く」っていうお客さんも増えてきて、そういう方が知らないお店を知るきっかけを作るというのも杜劇祭の魅力のひとつだと思っているので。それに、まだ杜劇祭は発展途上のところもあり、「あの場所でこの作品を観た」という強烈な印象をお客さんに残し続けるほうがまず重要な気がしていて、しばらくは新しいお店の開拓を続けたいですね。ふつうの人の感覚を入れる編集部 城下さんと辻本さんのお2人は、3年目の今回、企画制作に関わられたんですよね。まずそのいきさつを教えてください。城下 私は、卸町のTRUNK(※3)に事務所を置いてグラフィックデザイナーをしているのですが、同じ卸町にある10-BOXで開催した、夏の学校「好奇心と創造のレッスン」(※4)のチラシをデザインしたのがきっかけで、レッスンにも顔を出したんですね。そのとき受講した造形と演劇がセットになったクラスで演劇というものに初めて触れて、とても面白いと感じたんです。演じるという行為をするわけではなく、演※2 プロデュース公演:演劇作品などを上演するにあたり、制作者が企画立案し、スタッフやキャストを集めて行う公演方式。ここでは、仙台市と仙 台市市民文化事業団が行う演劇振興事業「劇都仙台」の中心となる公演を指す。1995年から2009年まで11回にわたり開催された。※3 TRUNK(トランク):仙台市若林区卸町にある、クリエイターやアーティスト向けのビジネス・活動支援の拠点。※4 「好奇心と創造のレッスン」:2010年夏に10-BOXで行われた、好奇心と自由な発想を刺激し、視野を広げることを目的にしたワークショップ。杜の都の演劇祭コーディネーター。仙台文学館学芸室長。2009年の文学館10周年事業では、井上ひさしをテーマに特別展や各種イベントを企画。赤間 亜生 あかま あき

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