24art reviewやんや 地元のイベントなどにも積極的に参加している若林区吹奏楽団(以下「若吹」)が結成10周年を迎え、委嘱作品の初演を含む意欲的なプログラムを組んだ。 地域密着を掲げる若吹らしく、蒲町中学校吹奏楽部とのジョイントステージで開幕。「お祭りマンボ」など、楽しさに溢れた演奏を披露してくれた。開演直前までゲーム機で遊んでいた客席の小学生が、演奏が始まると楽しそうに体を揺らしながら集中して聴いていたのが印象的だった。ただ、金管が強過ぎて、クラリネットなど木管のメロディーが聴こえにくい時もあった。蒲町中学校吹奏楽部は、1年生の多くが楽器を始めてまだ半年ということだったが、見事なハーモニーを奏でていた。 休憩後の第2部では若吹クロニクル(年代記)と題し、10年前の初ステージで演奏した「ハバネラ」など、過去の演奏会で取り上げた曲を、話とスライドショーを挟みながら紹介。ウルトラマンの科学特捜隊などの衣装も凝っていて、演奏だけでなく視覚的にも大いに楽しめた。曲間が開きすぎて、進行が滞った感じもしたので、曲間をパーカッションのリズムでつなぐとか、何らかの工夫があってもよかったのではなかろうか。 続く第3部は、10周年を記念して片岡寛晶に作曲を委嘱した「海底のファンタジー~伝説の地へ」の初演。ビブラフォンとグロッケンによる深海を思わせるような音型で始まり、クラリネットとサックスのゆったりしたメロディーが加わる。シンセサイザーの伴奏で全員が歌うなどの仕掛けも楽しい。後半は、冒頭の打楽器の伴奏で金管が力強くメロディーを奏し、テンポが速くなってクライマックスを迎える。木管の音程が金管より少し低めだったのが多少気にはなったが、若吹は初演とは思えない安定した演奏で、ファンタジックな世界を見事に描き出した。会場を埋めた聴衆からは暖かい拍手が贈意欲的なプログラムを組んだ定期演奏会若林区吹奏楽団 第10回定期演奏会宮城 純一(作曲家)
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