15造活動のメインとなる、今から20年先の2030年のメディアテークを思い描くとどのような風景が浮かびますか?鹿野 おそらく学校とか会社とかの枠組みも変わっていくなかで、日ごろ勉強する場所や働いている場所ではない、知的好奇心を満たすような場所であってほしい。そのためには人と人が顔を合わさなきゃいけないし、新しいメディアに触れていける場所であってほしい。さらに言えば、もう少し偶発的な部分から「こと」が立ち上がる。そういう状況になるといいなと思います。前野 体験は深度が大事です。例えば、読書も単に本を読むだけではなくて、ある小説について、それを実際に書いた作家が目の前で話すとその言葉はすごく心に響くわけです。次に同じ作家の本を読む時に、もうその本の読み方が変わっている。その体験をいかに深くするか。皆で映画をみる体験も、ビデオを家でみるのとは違います。鹿野 「場所」というのはすごく人の心に残る。その強さは大事ですね。メディアテークスタッフ 20年後は電子書籍が一般的になっている時代だと考えると、古典的なデッドメディアの牙城としてメディアテークが残るという見方もありますが。前野 演劇などの舞台芸術みたいに非効率性を深くして、いろいろな可能性を試しまくってほしいですね。スタッフの方にはプレッシャーもあると思うのですが、もう少し力を抜いてみると、フットワークの軽さが出てくるのではないでしょうか。坂口 施設の寿命を考えるというのは、施設の収束の仕方を意識するということです。そこを突き詰めると、逆に今何をすべきかということが具体的な課題として共有でき、そうすることが逆に施設の寿命を延ばしていくような気がしています。前野 メディアテークはそれ自体だけで成立するのではないので、街が20年後どう変わるかという視点が大事だと思います。これからのメディアテークに期待すること鹿野 常に何かに挑戦しているような展示ですかね。ローカルな部分だけではなく、大上段の部分もあってほしい。前野 格好良さもいいと思いますが、もう少し仙台という街に近づいてもいいんじゃないかという気はします。坂口 私からは、メディアテークの多様性もキープしながら、100人中1人でもなく、3人中1人でもなく、10人中1人ぐらいが反応するような企画を持続してもらいたいと思っています。(2010年10月5日、せんだいメディアテークにて)東北大学大学院助教、博士(工学)。主に文化施設の計画・設計・調査研究に関わる。主な参画プロジェクトとして、せんだい演劇工房10-BOX(共同設計)、仮設神楽舞台2004(共同設計)、東北大学川内萩ホール(ステージコンサルティング)など。主な著書として、編著『劇場空間への誘い』(鹿島出版会、2010年)ほか。テトラロジックスタジオ共同主宰。せんだいメディアテークの来館者調査分析を継続して行っている。坂口大洋 さかぐちたいよう
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