13ション開発をしながら、地元の松島の町づくりにも少しずつ関わっています。身近なところでの活動と、様々な世界とつながっている活動。今の自分にとっては、この状況は非常に良いバランスだと思っています。小さくつないで街をかえる坂口 前野さんは、書店の経営のほかトークショーなどのイベントを企画し、本を媒介として個人が様々な世界とつながる場づくりを実践されています。それは鹿野さんの活動とは対極に見えながら、共通する点もあるように思うのですが。前野 書店を開店する前までは、仙台という街を少しわかった気になっていたのかもしれません。でも実際に開店してから、日々人と出会うと、情報量の多さに本当に驚きます。まだまだ発掘できていない部分が多いと感じていますね。坂口 都市の様々な活動を発掘することは重要なことだと思うのですが、従来の公共施設では難しいし、ある意味不得意な部分です。しかしメディアテークはそのミッションを持っていて、実現しなくてはならない。その点で前野さんの活動や「火星の庭」という場の仕組みが、大変参考になるように思うのですがいかがでしょうか?前野 私はよく人や場所を紹介することにしています。いろいろな人のつながりが広がることで、街全体が盛り上がり、最終的に私の店にその賑わいが戻ってくればいいと思っているんですね。仙台という街全体の魅力がやはり大事です。若い人は、東京が面白いと思ったらすぐ引っ越してしまいますが、何かしら自分の街に好きな部分があればそこに引っかかりが生まれるのではないかと。私の店に来られる観光客の方達は、一般的な観光情報とは違う情報を求めて来店されるのですが、観光地図にないポイントをいくつか紹介させていただいています。100部ぐらいの地図があっても2ヶ月ぐらいでなくなってしまい、まるで私設観光案内所という感じですね。鹿野 仙台に来ると「火星の庭」に行かなきゃと思う人は多いんじゃないですか。前野 週末はほとんど市外の人ですね。旅行ガイドに掲載されていない場所を求める人達です。仙台は街として、結構そういう層を見逃しているんじゃないでしょうか。メディアテークにもそんな人達が訪れていると思いますが、仙台の街の魅力を直接アピールする場所としては難しいところではないでしょうか。坂口 その場所に次につながる可能性は大事ですね。では、メディアテークへの期待が持続したり、様々な人との関係を生みだすにはどうすればよいでしょうか?一つのアイディアとして、スタッフがもう少し名前を出すということがあります。誰々の企画のようにそのレベルで人とつながっていく。もう一つは空間。例えば常に人が流動している1階のオープンスクエアを街との接点として、もう少し運営上積極的に位置づけるとか、場所をプロデュースする仕組みがあるべきではないでしょうか。前野 例えば塩竈の「しおがま・まちの駅」には、土産物屋やお寿司屋さんなどが出店したりしていて、様々な情報が集まっています。そういう場はすごく面白い。少し制約を緩めていく仕組みを考えてもよいのではないかと思います。鹿野 情報がリアルに体験できる場所ですね。
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