12かつ今日のテーマに関するポイントが浮かんできたように思います。まずは関わるプロセスの中にメディアテークらしさがあるのではないかということ。メディアテークは理念の一つに「様々な活動の結節点となる」ことを掲げています(※5)。しかし、つなぐとはどういうことなのか、なかなか明確には見えてこない。しかし様々な活動のプロセスとそのネットワークの変化、そしてその深さの中に手掛かりがあるように思いました。もう一つは、お二人の活動は複数の場や媒体、そして方法論を持ちながら、ある意味仙台にこだわって活動拠点とされていることです。これは街のポテンシャル(潜在的な力)や、仙台におけるメディアテークの役割を考えるヒントにもなるような気がします。鹿野 広告の場合は突き詰めると商業との接点が重要なので、仙台という街は現実として不利な部分はあります。しかし広告とは異なるところで何かを表現しようと考えると、最近の技術的な進歩などもあり、東京との格差をあまり感じずに自分の個性を表現する環境が整いつつあるような気がしています。ではそれを生かす場所を、と考えた時に、メディアテークは非常によい居場所となるというのが率直なところです。特にこの10年間、インターネットを含め社会的な状況が変わってきているので、仙台で表現の可能性を考える方が面白そうだなと思っています。坂口 作品に対する批評や受け手からのリアクションには、活動する場所の違いが表れませんか?鹿野 インターネットに自分の作品をはじめとして、メディアテークや宮城県美術館などの展示作品を公開すると、海外から様々なリアクションがあります。そしてそのことがきっかけとなって、作品にヴォランタリーな形で関わってもらうような場合もあります。実験の場は身近に置いて、それを開いた場所に投げ込んでいく。そんな感覚ですね。前野 発表の場としては差がなくなってきていると思うのですが、創作する環境としてはどうですか?鹿野 私は松島に住んでいるのですが、そこでシリコンバレーの会社とiPadのアプリケー※5 メディアテークの理念 ①最先端の知と文化を提供(サービス):利用者の需要にフレキシブルに対応します。 ②端末(ターミナル)ではなく節点(ノード)へ:ネットワークの利点を最大限に活用します。 ③あらゆる障壁(バリア)からの自由:健常者と障害者、利用者と運営者、言語や文化などの障壁を乗り越えます。book cafe「火星の庭」店主。仙台の調理師学校卒業後、青森県の作家・太宰治の生家「斜陽館」(当時は旅館だった)で働く。のち東京の日本料理店を経てドイツに渡り、帰仙して様々な職業を経験。2000年、古本屋と喫茶店がセットになったブックカフェ「火星の庭」を開店。店を会場に、読書会やリーディングなどのイベントを開催するほか、「Book!Book!Sendai」のメンバーとして本にまつわる多彩なプロジェクトを展開中。book cafe「火星の庭」仙台市青葉区本町1-14-30 ラポール錦町1F022-716-5335前野久美子 まえのくみこ
元のページ ../index.html#14