11前野久美子 私は仙台に来て18年ほど経ちますが、10年ほど前から古書店とカフェをやっています。店をはじめる前に出版社にいて、ミニコミ紙やイベントに関わっていたのですが、そういう活動の場が足りないことを感じていて、ついにそのような店を開くことになってしまいました。坂口 場がなければ自分ではじめてみようと。前野 当時はアンダーグラウンドというか、実験的な試みに接する場所がなかったですね。仙台駅前にあった八重洲書房が閉店したり、街全体の文化的なムードが疲弊していた時期で、そんな時にメディアテークができるらしいという話がありました。市民としては期待する反面、どういうものなのかよくわからないところもありましたが、実際に開館した時には予想を超えたものでした。開館当初は残念ながらあまり関わりはなかったのですが。書店を経営するなかで、一つの場所だけで活動を展開するにはやはり限界があって、地域という少し広い枠で捉えないと先細りになるなと思ったわけです。そこで「Book!Book!Sendai」(※4)というイベントを企画して、ライターや書店員などが10人ほど集まっていろいろ活動するなかで街に目を向けてみると、メディアテークは絶対外せない場所でしたね。年1回の大きなイベントでは、メディアテークを使って何らかのつながりを持たせてもらっています。今年はこれまででいちばん関わりがありました。仙台在住の漫画家・いがらしみきおさんを取り上げ、図書館(2階)のベンチスペースやスタジオ(7階)のスペースを利用して、一冊の「ぼのぼの」が本屋に並ぶ過程を展示しました。メディアテークのコンセプトと空間にマッチしたプログラムだったと思います。その後、スタッフの方とも様々な連携をしてきています。もちろん課題もいくつかありますが、全体的にはメディアテークが開館する前後で、活動の内容や広がりは大きく変わったと思います。ローカルでありグローバルであること坂口 今のお二人の話は非常に興味深いですね。違った方向に見えて本質的には近く、※1 仙台クリエイティブ・クラスター・コンソーシアム/クリエイターやクリエイティブ企業のサポートを行い、仙台にクリエイティブ産業のクラスター (集合体)を形成すること、都市・社会の課題をクリエイティブ・アプローチにより解決することを目的として活動している産学官の連携組織。※2 インターフェイス/コンピュータ上で異なる機器やプログラムをつなぐもの。※3 アプリケーション/ある仕事を処理するためにつくられたコンピュータのプログラム。※4 Book! Book! Sendai/古書店・出版社・ライター・書店員などが集まり、街の中で本と出会えるイベントを企画・開催するグループ。毎年6月に Book! Book! Sendaiというイベントを1ヶ月にわたって行っている。WOW(東京、仙台、フィレンツェに拠点を置くヴィジュアルデザインスタジオ)チーフヴィジュアルアートディレクター。WOWにてCMなどの広告映像やオリジナルのアート作品を手がけるほか、ウェブサイト「未来派図画工作」でも個人の作品や表現活動を公開。メディアテークでの展示 「Motion Texture」鹿野 護 かのまもる
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