季刊まちりょくvol.1
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32文化団体紹介2◎厳しくも楽しい練習土曜日の全体練習にお邪魔した。部長の大内さんから、「先生の指導はビシビシ厳しいですよ」と聞かされていたので、固唾を呑んで様子をうかがう。定刻となり、指揮棒が振りおろされ、団員の指がいっせいに動き出す。「男の人は女の人をしびれさせるように、女の人は男の人をしびれさせるように!」「弱いと同時に、やわらかい感じの音がほしい。やわらかくても、鈍くならないように」「百年前からこの曲を知ってるような演奏をしないと」難しい注文が出されるたびに、全体に緊張が走る。しかし、練習は不思議に軽やかなムードで進む。団員が独自の見解による曲の解説を披露したりして、笑いも起こる。いつの間にか、チルコロ・フローラの世界に引き込まれていた。途中、コンサートマスターの松野さんをはじめ、何人かに「マンドリンの魅力は?」と質問したところ、異口同音に「明るくて美しい音色」という答えが返ってきて、さすがイタリアの楽器だと納得。だが、練習中に伝わってきた雰囲気は、その音色によるものだけではなさそうだ。クラブで最年少の大学生、山内さんがこんなことを言っていた。「チルコロ・フローラの良さは、指導者とメンバーが意見を言い合って、〈互いに演奏をしている〉という感じがもてるところ。楽しいので、長時間の練習でも飽きません」練習のあいだ、団員たちの視線は、日本人離れした快活さをもち、イタリア人から「あなたは何なにじん人だ?」と尋ねられたことがあるという主宰に注がれる。◎思いが人を呼び寄せる高橋さんがマンドリンに出合ったのは12歳のとき。大学生の兄が所属するギタークラブ イタリア語で「マンドリンを弾く花の精(女神)のつどい」という意味をもつ「チルコロ・マンドリニスティコ・フローラ」。主宰の高橋五郎さんが1965年にこのマンドリンクラブを結成した当初、20人ほどの団員がほとんど女性だったことや、マンドリン発祥の国・イタリアで師事した先生からの勧めもあって、このゆかしい名前が付けられたそうだ。 「周りからは呼びにくいって言われるけど」と高橋さんは苦笑いするが、名前に戴いた女神に見守られてか、長きにわたって演奏活動を続け、今年で創立45周年を迎えた。チルコロ・マンドリニスティコ・フローラマンドリンとともに45年主宰の高橋五郎さん

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