季刊まちりょくvol.1
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10TIME IS ON MY SIDE —演劇から見える「いま」*劇団を長く続けていらっしゃいますが、その良さとは何でしょう。石川 創造するときに阿あうん吽の呼吸でやれるのが一番良いことだと思う。新人も3年もすれば相手が何をしたいのか、自分が何を求められているのかが自然とわかってくる。ヒエラルキーでも家父長制でもなく、あっさりした家族のような関係の中で安心して居られること、いろいろなことがやりやすいことが劇団の良さだと思う。丹野 昔は稽古場で1年のうち350日ぐらい公演して、残りの日はバンド演奏やって、本当に休日なんてなかった。1つの作品を100回公演とかやっていたのね。家族より一緒にいる時間が長いから、気を遣わないし、余計な言葉が要らない。創る時に本気で喧嘩もするけど、「この人たちのためなら!」と普通以上にがんばれる。いざという時の火事場の馬鹿力みたいな団結力はある。でも、大変と言えば大変ですよ。私も泣くし、わめくし(笑)。石川 ここ数年、東京でも仙台でも劇団は崩壊気味ではある。しかし、やはり劇団の芝居は呼吸が全然違うし、「これは強いな」とエネルギーを感じることがよくある。ジャズの演奏みたいに、好き勝手にやっているようで、それがある瞬間にひと塊かたまりになって爆発する、こっちが身震いするようなことがあるんですよ。丹野 ありますね。一緒に過ごしている時間の堆積が、ある瞬間に炸裂する。「劇団なんてムダだ」と誰かに言われたことがあるけど、でもそのムダなところがないと、面白いものは創れないと私は思っています。ムダだらけに命かけますね。石川 そのことを劇団員全員が大事だと思えるかどうかですね。やはり「同じ釜の飯を食う」のは大切で、うちの劇団では、われわれの用語で言う「飲み稽古」も必ずやっている。それでストレスを発散する。丹野 すばらしい!(笑)*良い役者とはどんな人だと思いますか?丹野 何をやっても伸びやかで自由で、どんな場にも馴なじ染めて、遊べる人。石川 こっちの言ったことにすぐさま対応できる人。頭も感性も良くてからだも利くのが理想だけど、とにかく頭の固い人はダメだね。凝り固まってない人がいい。丹野 ダメ出しするとフリーズする人もいるし、落ち込んで帰っちゃう人もいるの。柔軟な人が面白いよね。石川 テクニックがなくても滑かつぜつ舌が悪くてもいい。だけど、めげない人。「おまえ下手だ」と言われても全然へこたれない人がいい。それと、からだも丈夫な人ね。丹野 以前、うまく話せない人たちの劇団に関わった時に、一生懸命話さないと言葉というものは伝わらないんだと感じて、泣きました。あんなふうに懸命にやらない役者が多いから腹が立つ。それと、役者はそこに居ることがリアルでないといけないものです。どんな設定であっても、その中にリアルに、生の人間として存在しないといけない。「間違いなくいまここに居る」感じがないと。*演劇をやれば人は柔軟になれるでしょうか? 近年は、特に教育の現場で演劇が期待されていますね。石川 欧米のように学校に演劇の教育を取り入れて、コミュニケーション能力を高めようと※☞P.8から続く

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